「少女の恋心の理由」



十月、外は寒く学校中にも冷たい空気が充満していたある日…
校内は教師も生徒も風邪が流行していた。
校医のマダム・ポンフリーの特製「元気爆発薬」はよく効いたが服用すると
数時間は耳から煙を出し続けなければならなかったので飲む人は少なかった。

さて、ここに一人の少女がいる。
名前はエレナ・グレンチェスター、通称エル。
もちろんホグワーツ魔法学校に通う魔女だ。
サラサラの金髪を耳のあたりでバッサリ揃え、目は少しつり気味のパッチリした比較的整った顔立ちである。
だが今は目は赤く涙目ですわり気味、そして鼻は赤く染まっている。
完全に風邪の症状である。
「クシュンッ!…ああ、大人しく部屋で休んでた方が懸命だったかも…。」
食事が終わり、朝一の授業に急ぐ生徒たちの中一人ぼやく。
スラリとのびた手足を重たげに運びながら黒いマントを翻す。
寮章は青いレイブンクロー。
そんなエルを見つけ一人の少女が駆け寄ってきた。
「エル?!休まないでいいの?風邪、引いてるんでしょ?」
マントには同じレイブンクローの寮章がついている。
茶髪の長い髪をおさげに編みメガネとそばかすが印象的な少女、エルの友人エミリア、通称エミーだ。
「何言ってんのエミー!今日は『魔法薬学』の日よ?!」
「あー、そうか…。今日はスネイプの授業があったのか…。どうりで休まないわけだ。」
誰から見ても判る嫌そうな顔をして少女はうめいた。
「そう!今日はセブルスの授業があるのよ!休んでなんかいられないックシュン!」
セブルス・スネイプはホグワーツの魔法薬学の先生である。
冷血、毒舌で自分の持ち寮スリザリンの生徒だけを贔屓したりする。
スリザリン生以外の寮生はみんな嫌っている。エルを除いて。
「こりないね…あんたも。私は休みたくなってきたわ…。」


午前の授業が終わり、昼食に賑わう大広間で一人ますます気だるそうな顔をして座っているエルがいた。
目の前の食事にはあまり手は付けられていないようだ。
対照的に隣に座っているエミーの食事はすでに無く、優雅に読書を楽しんでいるようだ。
「ックシュン!!ズビ…。う"〜ん…だんだん酷くなってるような…。でも次は魔法薬学の授業…!頑張らなきゃ〜、、、はふ。」
「変な意地張らないでマダム・ポンフリーの薬もらってきたら〜?それとも私の即席風邪薬でも飲む?」
まさに今読んでいた本のページをちらつかせ怪しげな笑みで近づいてくる。
「…ちょっと、それ魔法植物の栄養剤の作り方じゃない…ズズッ」
ページをひとなめし、鼻をかみながら答える。
「それに、今あの薬を飲んだら次の授業は間抜けな姿で受けなくちゃならないじゃない!ここまできて…それだけは勘弁だわっ!!ックシュン!!」
「えー?でも、この栄養素のファーマンを組み替えてー…そんでぇ…ブツブツ…」
何か持論を語るエミーを尻目にエルは立ち上がり大広間を後にした。
廊下に出ると昼食も終わり、昼休みを堪能している生徒たちがちらほらいる。
「あ、ちょっと待ってよエル〜。冗談だってばぁ!」
後から泣きそうな顔をしてエミーが追いついてきた。
「でも、本当に体調は大丈夫なの?授業受けたいのはわかるけど…」
「ここまできたら意地よ!根性よ!耐えてみせるわ…っ!!」
その時、廊下の突き当たりずっと向こうから見覚えのある影が近づいてきた…。
マントを翻し、気難しい顔で近づいてくる…。
「セブルス!」
彼をいち早く発見し、心を躍らせるエル。
着崩した制服を整え2、3歩下がった。
「えっ?!ど、どこ?!」
エミーは身構えるように体を強張らせてあたりを見回している。
そうしているうちにスネイプは二人に近づいてきた。

少し俯き加減で何かを考え、急に踵を返して少女は走り出す。
「え?!あ、ちょっとエル〜〜!!?」
「ミズ・グレンチェスター!」
その様子に気付いたスネイプがエルを呼び止める。
走り出した足をピタと止め、エルは振り返った。
「我輩を見るなり走り出すとは気分が悪いな。次の授業は私の授業ではないかね?教室は反対方向だぞ。」
「ええと、授業には出ます。でもほら、今風邪が流行ってますし…。」
うつむき加減にエルが答える。
「だからどうしたというのかね。」
スネイプはエルと一歩もない距離に詰めて来ていた。
「ですから…ハックシュン!!…あ…。」
エルがスネイプに向き合ったときくしゃみは容赦なくスネイプに降り注いだ。
「あああ!!だから逃げたのにぃー!!ズズッ」
エルがハンカチを探しながら嘆く。
「つまり我輩から逃げたのはこの鼻水を降り注ぐのを防ぐ為だというのかね?」
スネイプは顔を引きつらせながらのたまう。
「そうよ!セブルスに風邪をうつしたくないと思ったの!もういちいち言うことが嫌味くさいんだから!」
スネイプの服をハンカチで拭きながらエルが反論した。
「我輩は風邪などひかぬ。」
本を持ち直しスネイプが答える。
「またまた。夏休みに風邪で倒れたのを看病したのは誰だと思ってるんですか!」

そう、今をさかのぼること数ヶ月前夏休み誰もいない校舎で風邪でダウンしていたのは紛れもないスネイプなのだ。
そしてそれを介抱したのはエルだった。
エルは帰省する生徒達には混じらず学校に残っていた。
エル曰く実家は虚しいだそうだ。
なのでいつも学校に残り図書室や温室に通っている。
そんな時に風邪のスネイプと出会ったのだがこのことは口止めされていた。

「ミズ・グレンチェスター…!」
エルが気付いた時は遅かった。
周りに居た生徒からヒソヒソと話し声が聞こえる。
(やば…)
「我輩には覚えがないな!まったく寝言は寝てるときにいうものだ!」
そそくさとその場を去るスネイプが去り際にこう呟いた。
「後で薬を調合してやる。準備室にきたまえ。」
「セブルス…。」
「授業には遅れないように。」
釘を刺すように振り返り生徒達を見渡す。

「やっぱセブルスは素敵…!!…ハックシュン!」
目をキラキラとさせながらスネイプを見送る。
「ちょっと夏休みって何よ。しかも今のやり取りをどう間違えたら素敵に結びつくの?」
呆れた顔をしたエミーが後ろから話しかけてくる。
「夏休み?何の事?」
ニコリと笑いエルが聞き返してきた。
「エルが言い出したんじゃない!」
「何のことか判らなーい!私はいつも通り知的で優雅な夏休みを過ごしたわよ。ハックシュン!!」
満面の笑顔でエルは教室へと続く廊下を歩き始めた。
クスクスと笑い楽しそうに歩くエルをエミーが追いかける。
窓にはチラチラと雪が舞い降りてきていた。



はい!これは多分ハリポタ2巻あたりを読み終わって書いたものです。
後半を書き直して短くまとめました、が意味不明になった感がいなめない。
もちろんエルやエミーはオリジナルキャラで本編には登場しません。
スネイプ好きが妄想となって具現化したものです。
そして小説は処女作じゃないでしょうか。
漫画もいいけど文で世界観を表現するのも楽しいです。が、ほんと拙い作品で恥ずかしいです。
そしてエルにはクシャミするときは手を当てなさい!といいたいです。レディーでしょ…。まぁそこが彼女の持ち味。